忘れへんうちにの記事が増えたため、「山の記憶」に載せていたものを、こちらに「山の思い出」として順番に移しています。
若い頃、山や上高地に行くのは初夏の頃だけだった。その頃は夏の花を見ることができなかったので、夏山に行きたいと思ったものだった。その当時よく見た花はニリンソウやツバメオモトなどの花だった。
それらに混じって咲く花にツクバネソウがあった。4枚の葉が輪生するツクバネソウは見てすぐにそれとわかった。大きさは4枚の葉を両手で取り囲めるかどうかくらいだった。
今回残念ながら4枚葉のツクバネソウの写真が出てこなかったが、8枚葉のクルマバツクバネソウの写真が見つかった。クルマバツクバネソウはツクバネソウより後に発見したと記憶している。クルマバツクバネソウはツクバネソウよりも少し大きい程度だった。
帰宅後図鑑を見ると双方とも「ユリ科ツクバネソウ属」に属していることがわかった。その2つの写真の下にキヌガサソウの群生写真があったので、キヌガサソウも同じような大きさだろうと思っていた。
もちろん見たかったが、夏に咲くのか、同じ時期に行っても見ることはできなかった。その後夏山に登るようになったが、どこにも見つからない幻の花だった。
クルマバツクバネソウの蕾
クルマバツクバネソウの花
03年7月の3連休に白山に登った時、登山道で数人の人たちが一箇所を取り囲んで何やらワイワイ言っていた。いつもなら通り過ぎるのだが、この時は「何かあるんですか?」と聞いてみた。「キヌガサソウが1輪だけあるんですよ」これが初めて見るキヌガサソウだったが、あまりにも大きくて「立派」とは思えても「きれい」、まして「可憐」などという言葉は出てこなかった。
その後、05年にも白山に前回とは違うルートで登ったのだが、突然ナナカマドなどの木の向こうに大きな白い花の群生が目に飛び込んできた。20年にもなる私のふらふら登山歴でたった1つ見ただけのこの花が、遠くだがたくさん咲いていた。
もっと近くで見たいと思いながら歩いていると、道にそっていくらでも咲いていて、あまりの大きさにすぐに食傷気味になってしまった。室堂の上にも咲いていたくらいだ。
このようにしてあっという間によく見かける花となってしまったキヌガサソウを、今年も白馬尻で「もうええわ」という程見た。 白馬尻の話 白馬尻で見たキヌガサソウ