白馬の大雪渓を登るのに、JR白馬駅前のある店でアイゼンを借りたが、写真を撮るのを忘れていた。それでウチにあるアイゼンの写真を載せることにした。どちらも4本爪の簡易アイゼンだが、借りたものは左側の方に似ている。もっと頑丈で重かった。
山男と結婚したためにいやいや山に登るようになって20年以上になるが、アイゼンをつけたことはない。アイゼンが要るような時期に山に行かないからだ。

それは87年6月6日のことだった。中房温泉から燕岳を目指したが、合戦尾根あたりになると、私は5歩進んだら息が切れる繰り返しになってしまい、いつまでたっても燕山荘につかなかった。軽い高山病だったかも知れない。
燕山荘から燕岳頂上まで往復し、燕山荘の喫茶室でコーヒーを飲んだら午後の3時になってしまった。夏山なら雷が怖いのでそのまま燕山荘泊まりになるところだが、抜けるような晴天で雷の心配はない。コーヒーを飲んで元気を回復したので、大天荘へ向け出発した。この縦走路は、あまり起伏がなく、雪の残っているところも多く、そんなところは雪の上を歩くと楽だった。晴天で雪もゆるんでいたため、アイゼンは必要なかった。 そして何より槍ヶ岳を眺めながらの歩きは素晴らしい。山歩きと言うよりもハイキングといったところだった。午前中の登りの大変さを補って余りあるものだった。


さて、布団に戻った山男はリュックに忍ばせていたビールを取り出した。ところがそのビール缶は、念のために持ってきたアイゼンの刃が当たって穴が開いて、少なからずリュックの中にビールがこぼれていた。そんなビールはガスも抜けて美味しくないだろうと思ったが、何とこの山男はその穴からビールを飲み出したのだった。
帰宅後、リュックの内側を洗ったが、ビールの臭いを消すのは大変だったように記憶している。元々ボロボロだったそのリュックは、内側のシールなどがさらに剥がれてしまった。
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