追い越され、追い越され、更に追い越されと、追い越され続けながらの山歩きの記録です。これから登ろうかという人たちへの参考にはなりません。どちらかというと、山に登ってみたいと思いながら実現できない人向けです。実際に歩いたらこんなもんかなあと思ってもらえれば幸いです。
2008/08/31
白馬大雪渓にあるのはモレーンか
白馬大雪渓を1時間強歩いて、ようやく土が見えてきた。その時はアイゼンをはずして良いのかとか、落石は大丈夫かということしか頭になかったが、後になって、この土(あるいは砂礫)の盛り上がりはモレーンではないかと思うようになってきた。 高い山に登るとカールとか氷河地形とかいうものに出会うことができる。しかしモレーンというのはなかなか見ることができなかった。あるいは山の雄大さに目も心も奪われて、その下に広がる地味な地形に気付かなかったということもある。
95年の秋、南アルプスの仙丈ヶ岳に登った。小仙丈から仙丈ヶ岳の縁を通って頂上(3033m)に着いて内側に見えるのが「藪沢カール」。避難小屋の近くに盛り上がったのがモレーンだ(下2枚の写真の矢印)と、八ヶ岳が雨で急遽登ることになり買った本『南アルプス仙丈ヶ岳案内』に書いてあり、はっきりとわかるモレーンを見ることができたと嬉しかった。しかし、『山が楽しくなる地形と地学』には、仙丈ヶ岳の三日月モレーンは実はモレーンではなかった!
モレーンというのは、氷河の侵食によって削り出された岩石の積み重なりで(略)この三日月モレーンは、カールが作った半円形の急な岩壁から岩石が崩れ落ちて、急な雪渓や雪田の上を滑り落ち、雪渓のなくなったところに岩石を積み重ねて作った堤防状の地形、プロテーラス・ランバートだったのですとあり、がっかりした。 その後モレーンのことは忘れていたが、04年夏、室堂から薬師岳へと縦走した時に、薬師岳のS字モレーンを見ることができた。
下の写真で言うと、右上からこちら側まで稜線を歩いてきた。遠くからみるとどっしりした山塊に見える薬師岳(2926m)とは思えない痩せ尾根だが、そのほとんどの位置からこのS字モレーンを見ることができる。 さて、白馬大雪渓のこの砂礫の盛り上がりはどちらだろう?
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※参考文献
「南アルプス仙丈ヶ岳案内」(上伊那教育委員会 1995年)
「山が楽しくなる地形と地学」(広島三朗 1991年 山と渓谷社)